新規入会者の定着化では、継続できる仕組みとサービスデザインがカギとなる。そこで、サクセスフルに総合型業態「LEALEA」を展開する株式会社ラストウェルネスの家田さんと、その仕組みをデジタル面からサポートするSTORES株式会社の濱本さんにオンボーディングについて訊いた。(訊き手、Fitness Business編集長古屋武範)

  • 株式会社ラストウェルネス
    経営企画部 GM
    家田昇悟氏
  • STORES株式会社
    サービス法人部門 事業推進本部 本部長/シニアマネージャー
    濵本藤吾氏

古屋:フィットネス事業者が最終的に目指すカスタマーサクセスでは、その前のプロセスであるオンボーディングが重要です。ラストウェルネスでは、かなり早い段階から重要視してきたのではないでしょうか。

家田:この業界は、ひたすら新規入会者を受け入れるわけではなく、限られた枠のなかでお客さまにどれだけ使っていただけるかが、ビジネスの肝といえます。

また、初期投資が大きいことから、早期撤退やピボットが難しいため、地域に根付いていける仕組みが求められます。

他業界と違うのは、サービスが日常に溶け込んでいること。サブスクでは、継続は至上命題で、それを考えないことは、経営放棄に近く、“仕組み”が必要です。

それと、お客さまから「身体が変わった」と価値を認められるとスタッフのエンゲージメントも高まります。入会ばかりではスタッフが疲弊→楽しくない→退職→新人スタッフが対応、というループに陥ります。お客さまとスタッフが関係性を築けるようにすることが大切ですね。

古屋:今のお話には、ポイントが3つあると感じました。①PSF(Problem Solution Fit)、つまりお客さまの課題に対応できるサービスのデザイン、②制約条件理論:一番の弱点(=入会後のサポート)の強化による在籍の蓄積、③スタッフのワクワク感:スタッフがそこで働く目的(課題)を叶えてあげられるような本部の支援です。

濱本:家田さんのおっしゃるとおりで、我々も、フィットネス業界の提供価値は1回だけで完結せず、継続的に通い満足度を高めていくという前提で捉えています。

身体の変化が確認できるカルテや、継続来店を促進するメッセージ配信などへのこだわりは、その前提をもとに設計しています。

古屋:入会者は期待があって来ているので、それに応えられる体験価値の提供が重要ですね。「LEALEA」では、実際どんな取り組みをしていますか?

家田:運営的にはプロセス管理が特に重要です。ただ、時間がかかり大変なんです。もちろん基幹システムで出せるKPIもありますが、ないものを内製化し、店舗側で入力し、アクションとなると、もう、大変…!(苦笑)

ですが、それだけにやりきる力が運営者側にあるかが大事です。やるか、やらないか。ラストウェルネスは、抜け漏れなく、愚直にこなしています。

それが当たり前に組織にあったうえで、毎月、責任者会議で代表の脇谷が質問し、責任者がデータを見て答えます。もしプロセス管理・アクション実行をやっていなかったときは、その原因を確認し、やりきるようにしています。データ自体をとれていなければ、原因を確認します。

どこまで社長が細かく見れるか。その源泉に、社長の意志があります。

古屋:オンボーディングは探索プロセスですし、共創プロセスでもありますからね。特に、プログラムの設定や来館予約、上長との振り返りが大事になるかと。

家田:プログラムの設定では、開発したCRM上で、来店目的やどう身体を変えたいのかなど、悩みをフォーマットでヒアリングできるようにしています。そのなかで関係性をつくって、例えば、今日のビールをハイボールに変えるなどステップに分けて、認知行動療法的な単純なところからクリアしています。「LEALEA」に来る方は、パーソナルジムに行くような方とはまた違った方々なので、手前のプログラム設定から期待に応じて最適化し、その後もステップバイステップでサポートしています。

来館予約は、コールセンターを別で置き、積極的に電話しています。来館日によっては、店舗のシフトを調整するなど、コールセンターに裁量をもたせています。

古屋:入会6ヶ月間は、週1回のスクール参加を入会条件にして(月会費もプラスでいただいて)いるんですよね。

家田:クラブに来る意味をコミュニティに置きたいと考えているのです。

上長との振り返りは、振り返りの時間を業務時間内でつくっています。代表との対話の中でも、明確なKPIに位置付け、部下との振り返りを担保するようにしています。代表自身が、皆が振り返りをきちんとするよう握っていることがポイントです。

古屋:社長がチェックするということですね。ですが、デジタルツールがないと回らない部分もあるのでは?

家田:集計に時間がかかる作業はシステム化したり、大変なことを大変にしないようにすることは、お客さまと向き合う上ですごく大事です。例えば、予約率を上げようとしても、電話ではつながらなかったり、同時多発的に対応できなかったりします。そこで、管理効率を上げる側面で活用しているのがSTORESです。

古屋:STORESを選んだ理由は?

家田:UI/UXが今時のものになっていて、お客さまが見やすく違和感がありません。

また、継続的に会社として大きくなってきています。システム側も成長していないと、こちらとしても変わってくれないな、と感じてしまいますが、STORESのセミナーや情報発信を見ていて、どんどん変化していっていますので安心です。

利用システムを見極めるうえで、変わらないシステムよりも、変わっていくシステムを選ぶことが大事ですからね。STORESは変わっていきますし、成長していっています。

使い勝手も、問題ありません。

濱本:常に進化していく、という点はとても大事にしています。お客さまにとっての自然な使いやすさは、常に変化しますし、例えば以前につくったアプリは、今ではもう日々の店舗オペレーションに適用できなかったりするくらいなのです。

最近では、予約のしやすさを追求し予約フローをアップデートしたことで、予約完了率が120%になった事例も生まれました。

日々、お客さまの思考も変わっていくので、それに対応し続けることに力を入れています。

古屋:ほかにも強みがありそうですが。

濱本:データを蓄積し、店舗の売上アップに寄与できるかたちで使えるようにしています。

例えば、予約とPOSレジ(決済)が一気通貫で使用でき、日々の店舗運営を通して自動でデータがたまり、そのデータを軸に店舗の重要指標改善に向けてフォローすべき顧客に対して1to1のメッセージを送れるなど、自動化の範囲も広がっています。

体験の新規予約数は皆さん追っていますが、体験予約後キャンセルした方、来店後の入会者・未入会者のデータをすぐに活用できる状態で蓄積し、改善アクションができているかというと、そうでない事業者さまも一定数いらっしゃるかと思います。

データが扱いやすいことで、現状把握を正しく行い、データを活用して売上アップ施策を打ち、入会・定着につなげられるため、店舗の重要指標改善を効率的に行うことができます。

古屋:ボトルネックがわからないと対応しようがないですからね。入会前の顧客情報は資産でもあります。

濱本:重厚な基幹システムでも、実は新規体験やキッズのスクール体験に対応できないものが多かったりします。

顧客体験のデザインとして、お客さまに電話やフォーム、窓口などで応対してしまい、データ化(=資産化)しておらず使えないということになっていることも多いのです。7月のSPORTECでも、課題を感じている事業者が多いようでした。

古屋:ラストウェルネスさんでは、未入会者の再フォローはしていないですか?

家田:もちろんしています。キャンセルの件数も見ています。1件1件、担当者別にチェックしています。

古屋・濱本:見学入会率や体験入会率は、高そうですね。

家田:はい。

古屋:スタッフのオンボーディングは大切ですね。スタッフが対応しやすくなる支援を本部がすることが大切で、現場に丸投げしているようではダメ。オペレーションの標準化、人材育成、評価などをきちんとしないといけません。

家田:システムでいえば業務設計やデータ設計も大切ですね。例えば、体験用フォームと入会用フォームが別だと個別での集計が必要になり、その時間で入会1件対応できたよね、ということになります。また、フォームからすべてが同じシステムなら望ましいです。それが難しければ、中長期的にシステムをリプレースするロードマップが大事になるのではないでしょうか。

業務設計を突き詰めると、業務の取捨選択ができます。ここは、ボトムアップよりもトップダウンで、本部が介在するべきです。

古屋:では、最後に課題と展望を。

家田:オペレーションはうまくできているので、データ活用やシステム設計を中長期的に磨きこんでいきます。

濱本:機能のアップデートによりカバーできる業務範囲とそれにより取得できるデータが広がっています。店舗オペレーションに溶け込めるサービスを提供できるよう、データを活用した取り組み支援を含めて、開発を進めていきます。

古屋:ありがとうございます。

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