ウシオ電機株式会社(以下、ウシオ電機)は1964年に設立された。光をあかりだけでなくエネルギーとして利用、応用し、新しい光市場を創出していくことをコンセプトに、様々な製品を開発。’70年に東証2部に上場、さらに’80年には東証1部へ市場変更し、現在に至る。

同社が’15年より開発を開始したCare222®は、人体に悪影響のない紫外線による除菌技術。昨今高まるウイルス対策のニーズをきっかけに本技術を搭載した製品化を加速。医療現場を飛び出し、スポーツ領域にまで広がりを見せる同技術の開発ストーリーについて、平尾氏に詳しく訊いた。

平尾哲治氏
ウシオ電機株式会社 XEFL BU BU長

紫外線の確かな技術を信じ、開発と実験の日々を送る

紫外線には除菌作用がある。洗濯物を太陽光の下に干すのは、乾かす目的のほかに除菌が挙げられるだろう。20世紀初頭から海外の医療現場では、この紫外線を手術室などで活用してきた。

しかし、一点課題があった。それは紫外線による健康リスクである。人体にとって過度に紫外線を浴びることは悪影響を及ぼすとされているためだ。

ここで、転機が訪れる。コロンビア大学のブレナー教授の研究チームが2013年に衝撃的な論文を発表する。それは、“人体への悪影響を及ぼさずに殺菌ができる紫外線技術”があるという内容だ。

ウシオ電機はこの論文を発見し、すぐさまコロンビア大学へ連絡。丁寧に交渉を進め、ついに同社は’15年にブレナー教授が開発した技術を独占的に利用できる権利を取得した。同社が掲げる「未来は光でおもしろくなる」というバリューにまさに当てはまる。

だが、そこからは長い道のりが待っていた。

「一番苦労したのは、いかに安全かを証明することでした。加えて、人がいる環境下で紫外線の照射の有無によってどれだけ除菌されているのか、というデータを取ることにも時間が掛かりました」と平尾氏は振り返る。

なかなか花が開かない時期が続くも、ウシオ電機はこの確かな技術を信じ、研究と開発を継続した。世界中の大学や大学病院と折衝。そして、いよいよ確固たるデータを取得し、製品化を実現することに成功したのだ。

ウイルス対策のニーズ急拡大を経験

現在も多くの国と地域でウイルスとの戦いが続いている。そのなかで、同社のCare222®搭載紫外線照射装置は医療現場を中心に需要が爆発的に高まった。そこで、ウシオ電機は本格的に生産ラインを整えることになる。ようやく信じ続けた技術が花開いた瞬間でもあっただろう。

Care222®搭載紫外線照射装置の一番の強みは、紫外線が照射される箇所の空気中および表面の双方の除菌を担える点であり、この技術は世界で唯一無二である。

例えばノロウイルスのように、アルコールに対して耐性をもつウイルスもあるなかで、紫外線はそれらのウイルスに対しても有効性が確認されている。光が当たる場所に死角なしというわけだ。

スポーツ・フィットネスの現場に紫外線除菌を

この需要は医療現場に止まらず、東京タワーのような人が多く訪れる公共施設をはじめ、飲食店やスポーツ施設にまで利用の幅を広げている。

また、SASUKEでお馴染みの緑山スタジオでも利用されているほか、フィットネスビジネス115号においても、横浜スタジアムのロッカールームでの事例を紹介したことは記憶に新しいだろう。

スポーツ施設やフィットネスクラブの場合、どうしても密になりやすくマスクもしない場所として挙げられるのがロッカールーム。この死角となりやすい部分にも光を当てることで、会員さまはより安心して施設を利用できるのではなかろうか。

また、お手洗いなどの水回りについても、従来の感染症対策として利用されるアルコールシート、空気清浄機、および抗菌コート以外の選択肢として加えることができる。そのほか、温浴施設やスイミングプールの更衣室 、マシンの周りやヨガスタジオでも活用可能だ。

「弊社として初めてSPORTECに今年は出展します。施設のレイアウトや人流に合わせて、安心安全な環境づくりをご提案いたします。フィットネスクラブの皆さまと会場でお会いできることを心より楽しみにしております」と平尾氏は強く締めくくった。

Care222® 照射実験の一例
製品設置例