女性だけの30分フィットネス「カーブス」として、2005年に1号店を設立して以来、フィットネスに縁のなかった50歳以上の女性をターゲットにフランチャイズで店舗網を広げ、現在店舗数は約2,000店、会員数は73万人を超えている。

当初から、「健康寿命延伸企業として、超高齢社会の問題解決に貢献」することを理念に事業を展開してきていることから、予防医療的側面を持つ事業として展開してきている。エビデンスを備えることで、医療と連携する取り組みも増えている。

  • 株式会社カーブスジャパン
    常務執行役員
    齋藤光さん
  •  

カーブスの「30分間サーキットトレーニング」の、運動療法としてのエビデンス

カーブスが提供する「30分間サーキットトレーニング」は、30秒の油圧式マシンでの筋力トレーニングと、30秒のステップボードでの有酸素運動を繰り返す構成。12台の油圧式マシンが円状に並べられており、2周することで、全身の筋力トレーニングができるとともに、会員同士のコミュニケーションを活性化するような社会性も備えるプログラムとなっている。

カーブスジャパンでは、日本の社会問題である介護予防に取り組むべく、2008年に独立行政法人国立健康・栄養研究所(現、国立研究開発法人医療基盤・健康・栄養研究所)にて、「メタボリックシンドローム対策としての30分間サーキットトレーニングの効果」を検証したことを皮切りに、「生活習慣病予防改善」「介護予防」「認知機能改善」を主軸に、研究テーマを周辺課題へと広げてきている。

その経緯について、当時からエビデンスづくりに携わる齋藤光さんはこう話す。

「要介護の主な原因として、『メタボリックシンドローム』『ロコモティブシンドローム』『認知機能低下』が挙げられ、これらの課題に対してのカーブスでのトレーニングの有効性を確認し、学会発表や学術誌掲載ができるレベルでの研究を進めてきました。『メタボリックシンドローム』に関しては、カーブスでの運動を行うことでの循環器系機能の改善とともに、糖尿病の発症リスクが低減することや、日常の活動量が増えることなどのエビデンスを得ることができました。その後、『ロコモティブシンドローム』については、カーブスでの運動で筋肉量が増えるだけでなく、筋出力も高められることや、腰痛や膝痛の軽減にも効果があることが検証されました。『認知機能』についても、運動を継続することによる効果とともに、1回行うだけでも認知機能が高まることも検証できました」

現在は、研究対象を女性特有の課題に広げており、乳がんサバイバーの方々が、カーブスでの運動をすることで、QOLにどのような効果があるかの研究や、妊産婦の産後うつに対するカーブスでの運動効果などについて、研究が進められている。

行政との連携で予防医療を多くの人に

こうした介護予防へのエビデンスが増えてきたことで、介護予防事業でもカーブスでの運動が活用されるケースが増えている。

カーブスでの運動は、運動効果に繋がる定着率の高さも注目されており、一時期は全国150のカーブスで、介護予防事業を受託していたこともあるほど。参加した人の12週間の継続率も9割と高く、その後、自費でカーブスに入会して運動を続けることに繋がるケースも多く、介護予防事業の本来の目的を達成できると高評価を受けている。

これらの取り組みが発展し、静岡県三島市や京都府八幡市など自治体との健康づくりに関する連携協定を結び、地域が抱える健康課題に対して自治体と連携して取り組むようになっている。自治体が主導で行う体操教室や健康イベントの場合、同じ人が繰り返し参加する傾向にあるという課題があった。カーブスと連携して行うことで、カーブスの告知集客力と、行政事業としての信頼感が相乗効果となり、参加率を高めることに繋がることもわかった。行政の事業としても、より多くの方々にサービスが届けられることにメリットを感じる自治体も多い。

エビデンスベースドエクササイズによる心臓リハでの医療連携

心臓リハビリテーション(心臓リハ)における運動療法としても、病院との連携が2013年よりスタートしている。

現在の医療システムでは、保険が適用される心臓疾患のリハビリは150日で、この期間を終えると、リハビリができず、数年後に疾患を再発してしまう人も少なくないという。病院でもリハビリ後の患者さんをフォローできない課題感から、医療機関がリスクに対する責任を持つ形で、救急体制を整え、カーブスで心臓リハとしてメンバーを受け入れた。

岐阜県では、県の医療ネットワークとも連携し、岐阜県のどの病院やクリニックにかかっても、心臓リハとしてカーブスが活用できる体制づくりが進められている。医師からは、運動処方として心拍数での運動強度の指示が出されるが、カーブスでは通常クラスでも8分に1回、自身の手首で心拍数を計り運動量を確認していることから、オペレーションを変えることなく、心臓リハとしてのメンバーを受け入れられる。

横浜市とも2021年より連携し、強化指定病院の医師による運動処方箋に応じて患者さんの受け入れ、運動のサポートを開始している。

また、滋賀県では、滋賀医科大学医学部附属病院と連携した体制づくりが進められており、同エリアにメンズカーブスがあることから、男性の受け入れもスタートする。

カーブスでは、今後も研究を進めながら、社会課題を解決するソリューションとして、事業を展開していくことを計画している。