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RIZAP株式会社
事業支援統括部 人財育成ユニット川本 裕和氏
全国123店舗のRIZAPを運営するRIZAP株式会社は、2019年にヘルスケア事業をスタート。医療機関との連携や、メディカルトレーナーの育成・導入、研究機関との共同研究、自治体との連携という4つの取り組みを進めてきている。
2020年7月には、糖尿病だった島大輔さんの血糖値の改善事例とともに「健康ダイエット」を訴求したことに続き、俳優の松平健さん68歳、90歳を迎えた俳優の大村崑さんの出演によるCM「シニアプログラム」をリリースするなど、健康寿命延伸に向けたサービスを拡充してきている。
生活習慣に徹底して介入する運動療法としてのプログラム
RIZAPは、2012年に1号店を出店して以来、累計会員数18万人を超えるゲストに対して、ボディメイクのパーソナルトレーニングを提供してきている。中心となるプログラムは、短期間で、週2回の、1回50分の筋力トレーニングと、低糖質食の指導サポートにより、体質を改善するもの。担当トレーナーがついて、信頼関係の中でサポートが受けられるとともに、アプリでいつでも食事の報告や相談ができることなど、適切な生活習慣の獲得と、確実な成果が提供価値となっている。
RIZAPではこれまでに全国180を超える医療機関と提携してきており、医療機関との共同研究も進めてきているが、それができる要因として、食事と運動を中心に、生活習慣への介入が徹底されていることがあるという。同社でトレーナー育成を統括する川本裕和さんは、こう説明する。
「共同研究としては、2018年に朝日生命成人病研究所附属医院との肥満症治療に関する研究が最初でした。2ヶ月間にわたりRIZAPオリジナルの低糖質食材を、3食提供して、糖質を1日50gにした群と、1日120gにした群で研究を行いました。3ヶ月目は、介入なしの環境で、全被験者が1日糖質120gを各々で実施していただき、状況をモニタリングしました。結果、3ヶ月目は『この2ヶ月間と似た内容で食事をしてください』と伝えただけですが、リバウンドも見られないという結果が得られました。何をどのくらい食べていいのかを体感しながら2ヶ月間継続することで、3ヶ月目も、その食事習慣が保たれることが検証されました。この研究結果は日本糖尿病学会でも発表されました」
以来、胃がん患者の体力維持や、糖尿病、脂肪肝、精神疾患などの疾患に対するRIZAPプログラムの影響について共同研究を進めてきている。
こうした研究結果をもとに、疾患をもつメンバーの受け入れを進めつつ、必要に応じて一人ひとりの体質や病気・怪我の既往歴、治療状況について提携医療機関の医師と連絡を取り合い、食事やトレーニングの内容についての指示を仰いでいる。生活習慣への徹底した介入により、安全を最優先にしたパーソナルトレーニングサービスを提供してきている。
「RIZAP式体力年齢」で健康寿命の延伸にコミット
2017年には、筑波大学研究成果活用企業の株式会社THFと共同で、独自のメソッドによる「RIZAP式体力年齢推定式」を開発。
2020年から「シニアプログラム」として展開している。プログラムの提供スタイルはこれまでのRIZAPプログラムと同様で、短期間、担当トレーナーがついて、週2回、1回50分のトレーニングと、アプリでの食事指導サポートで構成されている。
「シニアプログラム」の違いは、最初の測定時に「RIZAP式体力年齢」が算出され、トレーニングの内容も、筋トレだけでなく、バランス力や柔軟性向上などの内容が加わる点。「RIZAP式体力年齢」は、「前後ステップ」「30秒椅子立ち上がり」「座位体前屈」「握力」「閉眼片足立ち」の体力テストにより算出される。体力年齢と体組成データの数値をもとに、トレーニングプログラムを組むことで、体力年齢を若返らせることができる。同プログラムは、コロナ禍中にリリースされたが、2ヶ月プログラムで40万円超という価格設定にもかかわらず、大きな反響があったという。コロナで海外旅行に行けなかったお金と時間を、このプログラムにかけるシニアも多く、パーソナルトレーニングで、感染予防の観点からも安心できることや、担当トレーナーが話し相手になったり、アプリで不安や疑問をいつでも相談できることも、コロナ禍でのシニア層のニーズを捉えた。
これまでに、RIZAP利用者全体におけるシニア層の割合は、18.4%(※2022年6月時点)まで高まってきている。
「1日5分のちょいトレ」で運動習慣づくりをサポート
2022年9月、RIZAPは新業態の24時間ジム「chocozap」の展開を発表。延床面積30坪ほどに、筋トレマシンを配置し、私服で、土足のままでもトレーニングできるスタイルで「1日5分のトレーニング」を啓発していく。月会費は2,980円で、全国の店舗が共通利用できる。
「1日5分の短時間での運動でも適切な内容であれば、健康数値を改善でき、30分以上の長時間運動に比べて継続しやすいといったエビデンスに基づき、サービスを開発しました。トレーナーは常駐しないものの、chocozap専用の『体組成計』と『ヘルスウォッチ』が日々の健康数値およそ19項目を記録し、ライフログデータを蓄積することで、A(I人工知能)を搭載した専用アプリがバーチャルトレーナー『ちょこっとくん』となって、パーソナライズされた適切なプログラムを提示していきます」
RIZAPでは今後も、ヘルスケアステーションとなる施設やサービスを開発し、健康寿命の延伸につながる予防医療分野のサービスを拡充していく。