(2)なぜ革新的なプログラムが必要か?
メンバーに愛される革新的なプログラムにはどのような特徴があるのだろうか。キーラン氏は、トレンドをファストファッションにたとえて話す。
「ファストファッションは、短いサイクルで提供される最先端のファッションのため、新規顧客を素早く獲得しやすい。流行に敏感であり続けられるならば、メンバーを取り込むきっかけにもなる。イノベーションとは、ファストファッションと同じようなものだ」
IT技術は常に進化している。SNSによって、手のひらの上で、年中無休で無料で、どこからでも、簡単にワークアウトを見つけることができる。Z世代の55%は、1日5時間以上スマホを使っている。
「ゆえに、イノベーションは重要かつ必要。次世代のメンバーとインストラクターを惹きつけるため、求められるものを提供する存在として、イノベーションができなければ、ニーズに応える他のクラブにあっさりメンバーを取られてしまうのです」
革新的なプログラムづくりは、イノベーションそのものということだ。キーラン氏は、イノベーションとは、ビジネスの将来性を追求することだとも話す。
では、どこから始めたらいいのだろうか?イノベーションにより、どのくらいの利益を生み出せるだろうか?そこで、キーラン氏は、イノベーションのために必要な投資・予算の確保について話す。
「Amazonはイノベーションやリサーチに、多額の金額を費やしている。イノベーションのための予算は、“あったらいいな”的な予算ではなく必ず確保しなければならない予算です。企業規模にもよるが、企業は、売り上げの平均3〜5%をイノベーションのための予算として確保している、というデータがあります。予算の確保が将来のイノベーションを生み出します」
メンバーからもインストラクターからも愛されるプログラムとは?
キーラン氏はニュージーランドでマーケティング予算をかけずにローンチしたLES MILLS SHAPES(以下、SHAPES)を例に挙げる。
SHAPESとは、腹筋、お尻、太腿を主なターゲットとしたプログラムだ。試験的にオークランドのクラブで導入し、スタジオのタイムスケジュールのうち、人気の少ないプログラムと置き換えていったところ、一番人気になった。人気の理由を紐解いていくと、次世代同士のコミュニケーションで、メンバーの情報共有により認知されていったことがわかった。1つのクラブで成功したので、ニュージーランドの12のクラブに入れたところ同じような結果となり、SHAPESのために入会する人が出てきた。Les Millsは、第二弾を出すつもりだ。
色々試すことの重要性を、キーラン氏は強調する。リサーチ不足により終わったトレンドに乗ってしまったり、リスクへの懸念から投資(時間、資金、リソース)をためらったり、時間をかけすぎて機会を逃してしまう。完璧を目指そうとしてしまうのだ。
それを克服するには、「誰のためにつくるかがすべての始まり」(キーラン氏)。そして、スピーディーに、小規模でスタートし、会社として将来の成功にコミットするなら失敗もOKにすること。試行錯誤を許容することだ。