全国133店舗のスポーツクラブを運営する株式会社ルネサンスは、2012年にリハビリ特化型デイサービス事業を開始して以来、ヘルスケア事業も数々展開してきている。同社は2019年6月に大阪国際がんセンター患者交流棟内に、がん特化型運動支援施設「ルネサンス運動支援センター」を開設するとともに、がん専門運動指導士の資格認定事業もスタート。がん患者のリハビリテーション分野に特化した新たなソリューションを提供することで、フィットネスの医療連携を実現させている。
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株式会社ルネサンス
ヘルスケアソリューション部
がんリハビリ事業研究チーム沖本大さん
がん特化型運動支援施設とは
がん特化型運動支援施設「ルネサンス運動支援センター」は、2019年6月に、大阪国際がんセンター敷地内に、ルネサンスが直営店として開設。大阪国際がんセンターを退院した方、通院しながら治療をしている方を中心に、パーソナル指導を提供している。延べ床面積は約47坪。ひと月のセッション数による会員制で、平均の単価は1セッション5,500円(税込)となっている。
がん(手術、放射線、抗がん剤治療など)の知識を有した専門スタッフが、それぞれの方の悩みや、身体の状態に合わせて、「カウンセリング」「アセスメント」「プログラミング」「運動指導」「効果測定」を繰り返しながら、運動習慣の獲得と自立した生活を支援している。
運営や指導内容は、大阪国際がんセンターから監修を受けて構成したもの、同センターの病院内にチラシやポスター、動画放映などで、がん治療前・中・後の運動を啓発し、興味を持った患者さんは、ルネサンス運動支援センターの無料相談会や無料測定会に参加して、利用を開始する。同施設の開設経緯について、株式会社ルネサンスがんリハビリ事業研究チームの沖本大さんはこう説明する。
「がんという病気は、以前は『不治の病』と言われていましたが、現在までに治療技術が進歩して、状況が変わってきています。診断から一定期間後に生存している確率を示す「生存率」、一つの目安である5年生存率は60%を超えています。その一方で、がんの早期発見が可能になったこともあり、がんに罹る人の割合は、2人に1人と言われるほど一般的な病気になっています。こうした状況の中、がんと診断される人は年間100万人に上る一方で、医療保険対象でリハビリが受けられるのは、入院中のみ。退院とともに、リハビリが受けられなくなり、通院しながらの治療では、リハビリが受けられないシステムとなっています。大阪国際がんセンターは、西日本有数の病院の一つとしてこの体制を危惧し、がんの治療を終えた後の自立した生活をサポートするべく、ルネサンスとの取り組みがスタートしたという経緯があります」
がん罹患による困りごとの3分の2は運動によって改善できる
がん特化型運動支援施設としての運動支援では、「がん患者の方々が抱える困りごとに応える」ことをコンセプトにサービスを開発してきている。同支援センターを利用した500人以上の患者に「困りごと」についてのアンケートをしたところ、「体力低下」「筋力不足」「運動不足」が全体の3分の1を占め、「関節の痛み」「関節可動域の制限」「腰痛」「肩こり」なども含めると、全体の3分の2を占める。がんの患者さんが持つ困りごとの大部分を運動で改善できる可能性があることがわかった。
ただ患者さんは、がんによる心身の痛みを抱えていることから、運動の指導以前に、気持ちに寄り添うことを何より大切にしているという。「どう接するか」「どのようにお話を伺うか」「どういう情報を収集すればいいのか」について、専門的に研修を受けたトレーナーが対応している。
特に「カウンセリング」と「アセスメント」では、悩みや身体の状態も一人ひとり違うため、アセスメントの内容から、一人ひとりに合わせ、プログラミングに繋げていく。処方するエクササイズやトレーニング自体は一般的な内容であるものの、一人ひとりにモディフィケーション(調整)してガイドしていく。
自宅での運動と併用することで早く目標が達成されるため、自身でも取り組める内容としている。また、施設に来館出来ない方にはオンラインでのセッションも提供しており、その顧客は全国各地に至る。
がん専門運動指導士が、医療領域と運動領域をつなげるソリューション提供へ
ルネサンスでは、この支援センターでの知見も活かして、2021年6月から、大阪国際がんセンター認定がん専門運動指導士の資格認定事業もスタートしている。
オンデマンドでの事前学習と、ルネサンス運動支援センターで応対した実際のケースをもとに、ロールプレイを重ねて、「寄り添いながら運動指導ができるスペシャリスト」を輩出していく。
前述のように、がんにおいて、現状では病院でのリハビリが限定的なことから、そのバトンを引き継ぐ存在が求められている。沖本さんはこう話す。
「がんの生存率が高まっている現在、日常生活や、職場復帰などに向けた支援サービスのニーズはますます高まると思います。フィットネス事業者にとって、この領域でのソリューションを開発していくことで、社会課題にも繋げられるフィットネスの価値をつくれると思います」