行動経済学の基本を理解するとともに、フィットネスクラブ経営に役立てる方法について紹介する本連載。前回は行動経済学の代名詞とも言える『プロスペクト理論』における、価値をどのように評価するかについての「価値関数」について説明した。今回は、プロスペクト理論の最終ステップとなる「加重関数」による評価について説明する。

■人は合理的に確率を評価できない?

人は損得などのリスクを持つような不確実性の高い行動をとるとき、どのような意思決定をするのかについて説明したのが、行動経済学の代名詞ともいえる『プロスペクト理論』である。このプロスペクト理論は、「前処理」「価値関数による評価」「加重関数による評価」の3つのステップに分かれる。

不確実性の高い選択を行う際、人はまず、前処理段階として「参照基準点」を定め、さらにその基準からどれだけズレているかによって損得を判断している。そして最後に、その行動を起こすことによって生じうる確率について判断し、行動を起こすのである。

プロスペクト理論を提唱したカーネマンとトベルスキーは、学生を対象に、人が確率をどのように捉えているかについての実験を行っている。

あなたはどちらを選んだであろうか? 簡単な計算をすればわかるが、当選する確率はAでは1万分の1、Bでは2万分の1(10万分の5)である。普通に考えれば、Aの方が確率は高いが、実際にはBを選ぶ人も多かったという。確率が非常に小さい場合、人は「どちらも小さいが0ではない確率」というアバウトな判断をし、正確な確率を見誤ってしまうのである。この実験の場合では、どちらも確率が小さいため、1枚よりも5枚の方が当たりそうと判断し、Bを選んだのである。

■なぜ宝くじは当たりそうな気がするのか

このように、本来は客観的に判断できるはずの確率を、主観的に判断し、合理的な判断ができないのである。この確率の主観的な評価は「加重関数」によって説明される(図)。人は、主観的な評価において、確率の小さいものを過大に評価し、反対に大きいものを過小評価する傾向があるのだ

あな