行動経済学の基本を理解するとともに、フィットネスクラブ経営に役立てる方法について紹介する本連載。今回は、日常生活のあちこちで見られる、行動経済学を実際に使ったサービスやマーケティング戦略について紹介する。
■なぜ?焼き鳥盛り合わせを頼んでしまうのか?
友人と4人で居酒屋に行き焼き鳥を頼もうとなったとき、「面倒くさいから盛り合わせ頼んじゃおうか」と言った経験はないだろうか? 焼き鳥に限らず、お刺身でもそうだ。お刺身の盛り合わせを注文する人は、実際に多い。
しかし、この盛り合わせを注文するという行為は、果たして本当に合理的だろうか? ハツとせせりが食べたかった人がいたかもしれない。しかし、盛り合わせに乗ってくるのは大体、ねぎま、皮、レバー、つくね、軟骨...といったオーソドックスなものが多い。運よく食べたいものが乗っていても、食べたくもないものも食べなければならない。しかもこの盛り合わせがお得なのであれば、まだ許せるが、実際店側は盛り合わせの利益率を高めていることがほとんどなのである。
さて、前置きが長くなったが、本来では好きなものを必要な分だけ注文するのが、合理的である。しかし、こんなことを言えば「面倒くさいやつ」というレッテルを張られるのがオチで、大体の人は渋々と盛り合わせを受け入れるしかない(盛り合わせが大好きな人もいる)。
ここでポイントとなるのは、この「面倒くさい」である。なぜ面倒くさいのか? 居酒屋のメニューは多く、焼き鳥と言っても多い店では10数種類存在する。人は、選択肢が多くなると、ヒューリスティック※1を使うようになり、熟考するのをやめ、即自的な判断を行うクセがあるのだ。この盛り合わせは、一気に数種類を頼め、しかもお店のオススメ(実際にはオススメというよりは利益率の高いものであることが多い)を注文できるとあって、ヒューリスティックでの意思決定にはうってつけの商品なのである。
※1:なぜフィットネスクラ